Fallout3 外伝 #15

リーダーのヴァンスには粗暴な雰囲気は一切無く、冷静で知的、そんな印象を受けた。ここにいる連中は比較的穏やかだ。もしかすると他の待ちにいる連中よりも穏やかで平和的かもしれないと思うほどだ。



話しかけるとヴァンスは慈善事業をやっているかのような話口調でこの場所を説明し、話を続けた。俺はその話を遮ることなく全てを話させようとしたが、ヴァンスが仲間たちのことを虐げられていた人々と表現するところに違和感を感じる。自分たちを化け物だとか悪魔だとか、さっぱりと要領を得ない内容だが、”特別な人間”だと言いたいのだろう。アンクル・レオのような異端な存在だと。あれを知らなければ、このヴァンスの言葉を何処まで信じていたか解らない。それどころか、どこまで武器を使わず、強硬手段に出ずにいただろうか。今は自分自身が変わりつつあるのを少し感じている。

ヴァンスの言葉を聞き、彼らが自らを吸血鬼の様な存在だとしているのは解った。彼らが掟とするものも知った。人を殺すためではなく、快楽のためでもなく、生きるために血液のみを飲む。敵でなければ殺さない。まずまず平和的なものだ。ヴァンスは彼らに秩序と帰属意識を与え、無差別な行動に出ないように抑制する役割も持ち合わせている。

だが、イアンと出会わなければならない。預かった手紙の一件もある。
アレフ居住区で何があったのかと問いただすと、ヴァンスから返ってきたのは意外な答えだ。ファミリーの血文字とあの行為はここにいる連中が絡んでいるとすれば、掟に背く行為だとは思っていたが、まさかイアンが殺してしまったものだとは。
だとすれば合点が行く部分も多い。他の家の連中やキングに知られずに殺したのも、イアンが両親を手にかけていたのなら悲鳴や大きな物音を立てることなく済ませられても不思議ではない。彼もまた吸血鬼か。

困惑をしながらもヴァンスにイアンへの面会を要求するとあっさりと受け入れられた。



ロックされた扉をターミナルから開き、彼の前に出た。自己を抑制できなければ襲いかかられる可能性も考えたが、通常の食事の最中で、俺がここに入ってきたことに驚いていたものの、それぐらいなものだった。



自分が吸血鬼になって、ミュータントだと思い込んでしまっている。それぐらいの衝撃があるのは理解できる。だが一つの誤りを見つけ、伝え、冷静さを取り戻させようと、ルーシーから預かっていた手紙を手渡した。

すると一気に表情は明るくなり、イアンは自分を取り戻したように見えた。その後彼に幾つかの吸血鬼の状態について質問をしたが、それはどうでもいいことだ。だが、ここにいる人たちを理解する役には立つ。そしてイレギュラーな存在たちに関してもより寛容に慣れそうだった。



ヴァンスへイアンの決断を伝えた後、アレフ居住区に関する協定を幾つか結んだ。そういった権限を与えられているわけでも、キングから許しを得ている訳でもないが、あの小心者をここまで連れてくることは出来ないだろう。それにお互いに敵対せず協力に近い形を取るこの方法は気に入るはずだ。



実際にアレフ居住区へ戻って伝えたところ、キングは喜んでその提案を受け入れた。最も、報酬らしい報酬はもらえないままだったが、”バラモン並に貧乏”と言い張るこの男から金を得るのは難しそうだ。まぁ、いい。



メガトンへと戻ってルーシーへと全てを伝えた。喜んでより親切に接してくれるようになったが、彼女へ対する下心を前面に出すこは辞めた。
そろそろ本題へ戻らなければならないだろう。
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Fallout3 外伝 #14

マーフィーと名乗ったグールの居た一角を調べても、イアンが捕らえられている様子はなかった。もちろんファミリーとは無関係なようでもあり、多少がっかり摸したが予想通りたったが、通路の奥、放射性物質らしい蛍光物質が流れ出ている場所には地下への入り口を確認することができた。



本来ならこんなところでは生活できたものではないが、グールはグールだ。問題はないらしい。放射能の影響を気にしながらも短時間であれば大丈夫だろうと高をくくり、マンホールから地下へと降りていく。

マンホール直下ではまだ放射能を検出していたが、少し先に進めば問題のない数値にまで落ち着いて、安心して進めるようになった。さすがに放射能を浴びすぎてグールの仲間居入りをするつもりはなく、間抜けな死に方もしたくない。
ゆっくりとこの洞窟を調べて、何もなければ再びあのはしごを通って元の北西セネカ駅改札付近へと戻らなければならないが、近くに捨てられていた腐ったバラモンの死体が、何らかの存在があることを示していた。
もしかすると、アレフ居住区でやられたバラモンの一つだろうか。
そんなことを考えながら先へ進んでいくと、あの甲羅の化け物ミレルークがこちらへと凄まじい勢いで向かってきていた。入り組んだ地形で発見が遅れ、あの素早いミレルークを近づけてしまったのは致命的だが、それは奴の弱点である顔を狙いやすくもする。



アサルトライフルの三点バーストを連続して顔面へと叩き込み、かすり傷一つに抑えられたのは幸いだった。銃声を聞きつけてやってきたもう一匹は、しっかりと待ちかまえて先制攻撃を加え、難なく倒した。予め来ることが解っていれば対処するのは易しい。地雷でも持ち合わせていれば道に撒いておくだけで足を止められ、一気に楽になる。どうやら同じ考えを持った相手がこの先にはいるようで、洞窟めいた部分を抜けた先には地下鉄のトンネルらしきものが広がっていて、ベアトラップから地雷、グレネードを使ったものなど多岐にわたるトラップが仕掛けられていた。

これはグールの仕業ではないだろう。彼らはこんな手間のかかることはしないはずだ。考えられるのは人間で、警戒しなければならない相手の居る連中。ミレルーク用だけならここまでする必要はないだろう。人間を警戒しているはずだ。

一つのトラップに引っ掛かり、苛立ちながら考えを巡らせても、思い当たるのは”ファミリー”ぐらいなものだ。恐らく当たりだろう。足下に注意を払いながらも先に見える人の気配には間隔を研ぎ澄ませておく。



銃は構えているが、奇妙なことに敵意は感じなかった。俺の風貌や動き方が平和なところで暮らしている連中や、正義の味方を気取っているような奴らとは少し違うことも少しは役に立っているのかもしれない。どちらかといえば、こいつらの方が近いかもしれないのだから。

見張りをしていたロバートが、”ファミリー”以外は立ち入り禁止だ、と幸運にも教えてくれたお陰でこちらにも対応をいくらか考えることが出来た。彼にはとても大事な物を捜していると嘯いて、同情を買い、信頼をさせて中への道を開けてもらった。安易に信じる姿は殺しをやってしまう連中には思えないほど間抜けだ。



さすがに扉の中にまではトラップが仕掛けられておらず、ここが居住区域なのは間違いない。テーブルに椅子、ターミナルに奥に行けばショップのようなものもある。”メレスティ”にいる人たちはおおむね好意的だと受け取っても問題なく、余計な行動さえ取らなければ撃たれる心配もない。

まず手前にいた女性、ブリアナに声をかけた。情報を手に入れるにはまずこちらの方がやりやすい。彼女へ色々とほのめかしつつ情報を引き出そうと狙ってみたが、意外と簡単にそれがヒットした。



ブリアナはイアンをヴァンスが瞑想室とやらに押し込んでいることを教えてくれた。親切にもそこへはいるためのパスワードも教えてくれたが、ここには他に三人、二階部分に二人の人が見える。いくらパスワードを教えてもらったとはいえ、簡単に入ろうとすれば見つかるのは避けられない。ならリーダーとおぼしきヴァンスとやらに直接話をしてみるのも悪くない。
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Fallout3 外伝 #13

臆病者のエヴァン・キングが説明してくれるところによると、ファミリーと呼ばれる連中の影響により、行動を制限されているそうだ。最初は典型的なギャングだった連中が”ゾッとする”感じを与えているそうで、奴らが再び来ないようにエヴァン・キングは見張っておかなければならないからと、住人の無事を確かめる仕事を請け負った。
ルーシー・ウエストへの下心が生んだ自業自得の問題だとしても、きな臭くなりつつあった。
ユーワーズ邸は無事を確認したが、頭の方は元々その状態にあるようだから気にしないでおく。ジェンジー邸も同じく無事を確認してのこるは最初の目的地だったデイビス・ウエスト邸だけだ。エヴァン・キング邸の先にあるそこだけは鍵がかかっておらず、ノックをしても返事などは何もなかった。キングが住人へ家に籠もるように指示してある状況で、そうだということは中の様子は簡単に想像できた。



中には干からびたような死体が二つ、そして壁にはファミリーの血文字。死体を調べてみたが、首に骨まで到達する咬傷があった。他殺なのは間違いが無く、これがエヴァン・キングの言っていた”ファミリー”の仕業なのだろう。
俺は依頼人のルーシーの顔を思い浮かべながらしまい込んでいた手紙を取り出して、その手紙を届けられないことを呪った。額は少なくとも報酬を得られるはずだったものがふいになり、これでは何のために依頼を請け負ったのか解らない。
落胆しながらエヴァン・キングへと二人が死亡していたことを告げると、彼は口汚く罵りながらもっと戦力があれば、と無い物ねだりをした。どうやったか知らないが、他の家の連中に知られずに殺すんだ。余程の腕を持っているか不意を突いたかだろう。そんな奴らを相手にキング程度がいくら居たところでたかがしれている。
覚めた気持ちで彼の言葉を聞いていたが、少しキングも冷静になったのだろう。俺の報告したのは二人の死亡だけだ。それを思い出したのか、ウエスト一家には息子がまだいることを教えてくれた。ファミリーと何らかの関わりを持っていることも付け足していたが、ここが信頼されていない理由なのだろう。咬傷のことは猟犬を連れているのかもしれないと非現実な見解をも聞かせてくれた。

俺は彼とのやりとりを半ば諦めつつ、息子のイアンの行方を捜さなければならなくなった。報酬はもう期待できなくなったが、ルーシーのためってのも悪くはない。
キングにファミリーの居所を聞いたが幾つかの候補を教えてくれるだけで、明確な場所は解っていないらしい。いくつかの候補の中から北西セネカ駅へ向かい、捜すことにする。



北西セネカ駅周辺にはレイダーの姿もなく、ファミリーと呼ばれる連中と思われる人影もなかった。もちろん番犬もいなければ野生生物の姿も見えない。拍子抜けするほど安全な環境に、ハズレの可能性を考えながら中へと足を踏み入れた。



入ってすぐの場所に死体が一つ転がっていて、これがイアンかと考えてしまったが、どうやら違うようだ。その先にある明かりと物音が人のいることを示しているが、死体を見る限りはあまり友好的な相手だと考えない方がよさそうだ。



扉から出てきたのは人間ではなくグールで、その奥にいるもう一人もグールのようだ。いつも突然襲いかかってくる異常なグールではなく、理性的な方の奴らだ。とはいえ、経験上”一般的な人間”よりは扱いにくいのは理解しているつもりだ。

奴はいきなり「秘密を盗みに来たんじゃないだろうな?」と銃口を向けている俺に問いかけてきたが、何のことかは知らない。俺が知りたいのはイアンの居場所とファミリーの居所だけだ。が、秘密の内容にもよる。
尋ねてみればこいつはうっかりと口を割ってくれて、ウルトラジェット、つまり薬物の製造法だと教えてくれた。このドジな男はそれにすぐ気が付き、「いつもこうなんだ」と情けなく口にしていた。俺は苦笑いをしながら銃口を降ろして、こいつらと敵対することはないだろうと適当にあしらい、手に入りづらい材料を持ってくると交換条件を持ち出すことで自由に中を調べさせてもらうことにした。幸いにも薬物に縁はなく、この一件が済めばここに来る必要もないだろう。適当に答えても支障など無い。
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Fallout3 外伝 #12

俺はどうにも好奇心が旺盛過ぎるらしい。素直にリベットシティへと向かっていればいいものの、メガトンへと寄り道をしていた。相変わらずガラクタを集めた街のままだが、一通りの施設が整っていて生活するのは易しい。

雑貨屋でモイラへ武器のメンテナンスと必要な弾薬の補給を行い、そして戦利品の売却をして精算をする。何とか黒字だったのは、あの無茶な戦いをこなしたからだ。ここを訪れるのは久しぶりだが、レイダーが陣取っている場所は覚えている。道中にもう一度戦うことになるだろうと覚悟していたが、スプリングベール小学校の前を通ってもその気配がまるでなく、警戒をしながら足を踏み入れてみたものの、中にあったのは死体だけだった。
殆どがレイダーが弄んだものではなく、レイダー自身だったのは驚きだ。メガトンといくら近くともあそこの連中にどうにか出来るとは思えないが、持ち去られていなければ、それ以上の損壊もない。グールやスーパーミュータントの仕業とは思えなかった。

それを知るためにもメガトンに立ち寄ったわけだ。結局ここの連中はそのことを何も知らなかったが、モイラ・ブラウンの嬉々とした表情と何かしらの作業がはかどっているらしい状況から推察するに、余程腕のいい、変わり者の協力者が現れたようでもある。もしかするとそいつがやったのかもしれない。



モリアティと話をしてみたが、こちらが興味を惹かれるような話題を無料で提供してくれるような奴ではない。本当のことをこいつに話してもどうにもならないだろう。適当に合わせながら何か情報を引き出せないかと合わせていたら、本来の目的のとは違うものだが、一つだけ面白そうな話題を教えてくれた。

ルーシー・ウエストという若くて可愛い女性がいるらしい。何か問題を抱えているらしいが、それはいい。以前にここを訪れたときにはノヴァがいただけだ。彼女と共に過ごす時間も悪くないが、いい女ならお近づきになりたい気持ちはある。下心から彼女が酒場に来るのを待ち、そして話しかけた。ブロンドの髪を束ねて、こぎれいに整えてある。悪くはない。少しガードの堅そうな女だ。



するとルーシーは俺が誰なのかを聞いてきた。この街の新入りなのか、と。それには素っ気なく答えながら興味を薄そうにして本題を先に話させる。問題がどういった種類のものかにも寄る。厄介な仕事には関わりたくないが、楽そうなものなら仕事をこなして距離を縮めておくのも悪くない。真っ当な人間と出会える場所もそう多くないのだから、こういうチャンスを逃しておくべきではない。

彼女の依頼は簡単なものだ。アレフ居住区の家族へ手紙を届けて欲しい、それだけだった。連絡が取れなくなっているから気になっている、実にそれだけだ。自分一人でそこに辿り着けるだけの力を持ち合わせていないため、代わりに届けて欲しい、というところか。報酬は少なそうだが、目的はそちらではないから構わない。

引き受けるとルーシーの表情と声のトーンが少し明るくなったようで、こちらの質問にも快く答えてくれるようになった。最初の少し警戒していた雰囲気は殆ど感じられない。
条件も悪くない。近くにレイダーの巣窟になっているケイリンホテルが近くにあるものの、川沿いを伝っていけば遭遇することもないだろう。彼女から封のしてある手紙を受け取り、指定された場所に向かった。



特に目立った連中と遭遇することなく、アレフ居住区へと通じる高架橋の残骸のところへ辿り着けた。入り口は一本しかなく、途中から見えた部分では中央部分は道が繋がっておらず反対側から向かうことは出来ない。地上から強力な爆薬などで攻撃をされない限り理想的な防御地形だ。見通しの良すぎるこの場所で銃撃をされればたまらない。身をかがめながら進んでみたものの危険はなさそうだった。ルーシーが言っていた保安官みたいな奴が入り口を見張っていて、問題はなさそうだ。

そう判断して近づくと、不意に足下で小さな爆発が起こり、身構えて銃に手をかけてしまいそうになった。



この男、キングが”何か”と俺を間違えて橋を爆破して進入経路を立とうとしたようだ。迷惑な話だ。そんなことをしてしまえば、ここにいる住人だって地上に降りることすら困難になってしまうだろうに、そういうことにまで頭が回らないのだろうか。
小心者のこの男にウエスト家へ手紙を持ってきたことを伝えたが、郵便屋などどうでもいいと対応してもらえなかった。より大きな問題が起こっているとキングは話すだけだ。典型的なギャングだった連中がバラモンを全て殺してしまい、我々の血が流されたと大げさなことを言う。そして助けてくれと。
報酬を要求したが、まったくキャップも持っていないと奴は言うだけだ。
無償で奉仕しろと?
うんざりしながら手紙をキングに渡してその場を立ち去ろうとしたが、彼は手紙を受け取ってくれず、自分で持っていってくれと言うばかり。

仕方なくデイビス・ウエストの家を探すために、エヴァン・キングが依頼してきた全ての人たちの安否を確認する羽目になり、依頼を引き受けることになった。
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Fallout3 外伝 #11

今日はあまりにも最悪な一日だった。レイダーにロボットに野生生物。襲い来るそれらを撃ち殺すだけで大きく体力を使い果たし、残ったものはボロボロになった自分の体だけだった。ねぐらは遠く、辿り着くまでにもう一戦ぐらい交える覚悟があったとしても体は思い通りに動かない。これまで生きていくために何度もこいつらとは戦い、文字通りの格闘を演じたこともあったが、連戦に次ぐ連戦はさすがの俺にも厳しかった。



だが幸いにも見つけた建物の残骸には休憩用として使えそうなベッドが存在し、寝心地の悪さを別にすれば体力の回復を図れそうだった。周囲を壁が囲んでおらず、どこからでも狙われる危険性があり、不用心だったが、それでもベッドで寝られるだけでもマシだと自分に言い聞かせ、闇夜と共に眠りにつこうとした。
だが、不意に大きな足音がして、嫌な雰囲気が自分の体を包んでいた。寒気を感じて呼吸を潜め、銃を手に取り、神経を研ぎ澄ませた。
獣なら血の臭いを嗅ぎつけてもう襲ってきていただろう。人間ならこんな足音はせず、武器の音や衣服の擦れる音がするはずだ。グールやロボットの可能性も考えたが、それよりも大きな可能性としてスーパーミュータントの存在があった。
あれは厄介だ。タフで手元にある銃で撃ち殺すことも問題なくできるが、一撃で仕留められず反撃を喰らうことも多い。何より厄介なのが、奴らは武器を使うことが出来る。
足音を立てないようにひっそいりと様子をうかがい、それが通り過ぎていくのを願った。が、それはふと立ち止まり、周囲の様子をうかがうような仕草をしていた。

覚悟を決めるべきか。

見つかってしまう前に銃を構え、先制攻撃で足を止めておくべきだと判断して銃を構えようとした。だが、その動きによって迂闊にも物音を発生させてしまい、スーパーミュータントの影は音に反応してこちらを見つけたようだった。もとが囲いのほとんど無い家の残骸だ。隙間からこちらを視認することは可能だろう。撃ってくると判断して物陰に体を潜めようとしたが、奴は脱兎の如く逃げ出していた。



スーパーミュータントなら鈍い声を上げて襲いかかってくるのが常だっただけに拍子抜けをしたが、それを逃がして仲間を呼ばれてしまえば勝ち目はなくなる。だからといって逃げてその場を離れるのもリスクが大きかった。闇夜ではこちらの目も利かず、敵と呼べる存在から逃げつつねぐらに帰るのは難しい。もしレイダーにでも見つかれば嬲り者だ。野生生物なら餌になる。
どれを考えてもいい方向に向かわないのならと、追うことに決めた。囮の可能性も考えたが、そんな作戦を奴らがとるとは思えなかったのもある。何よりも奴は武器を所持していない。



だが、実際に近づいてみてさらに拍子抜けをした。一切の敵意が”それ”には感じられず、さらにこちらに対して好意的な様子さえ見受けられた。本来なら死に至る距離にまで接近してしまったのは怪我で頭が鈍っていたからなのか、それとも他の要因によるものなのか自分でも理解できなかった。武器を降ろし、”それ”に近づくと、”それ”もこちらに理解を示したように話しかけてきた。

「ようボウズ」

耳を疑いながらも、生まれて初めてフレンドリーなミュータントに出会ったことを驚いて知らぬ間に口が動いていた。こんなことは話にも聞いたことはなかった。誰からもだ。
こちらの問いに”それ”はアンクル・レオと名乗り、「人生には殺し合いより大切なものがあると仲間に理解させようとした」という。アンクル・レオの仲間たちはそれを聞き入れず、彼を追い出したそうだ。
当然だ。スーパーミュータントがそんなことに耳を貸すのならこんな惨状は生まれていない。俺もこんなに苦労していない。

しばらくの間、俺は体の痛みよりも好奇心を刺激する目の前の存在に興奮して幾つか質問をしていた。それに対する応えもはっきりとしていて、今は人生の意味を探し求めていると教えてくれ、さらに名前の由来も教えてくれた。

その最中にある引っ掛かりを感じた。アンクル・レオは最初からこんな姿じゃなかったと説明をして、「スーパーミュータントは創られた」と俺に教えてくれた。仲間――つまり他のスーパーミュータント――が捕らえた普通の人間を”仲間”に創り変えているってことらしい。



まさかの話だ。スーパーミュータントが人間を捕虜にしている姿を見たこともあるし、それを救い出したこともあるが、どれも食用として捕らえているんだと思っていた。バラバラに解体されたものやゴアバッグの存在を見ればそう思うはずだ。だが、これで解った。どおりで奴らを殺しても殺しても減らないはずだ。

さて、この話をして、誰が信じるだろうか。
アンクル・レオと分かれた後、体を休めるためにまた廃墟の中に戻りそう考えた。忌まわしいパラダイス・フォールズの連中には笑われてしまいそうだ。メガトンならモリアティやモイラらがいるが、モイラは信用してくれたとしても気休め程度にしかならない。モリアティならろくなことにならない。他に点在する集落にいるような連中はこいつらに怯えて暮らしている以上、信じられない話だろう。ならリベットシティぐらいなものか。あそこにいる科学者連中なら話を信じてくれるかもしれない。信じてくれなくても構わないが。
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